研究活動

当社は、「患者さんのために」を基本理念として、がん領域、中枢領域を中心に価値の高い新薬の創出を目指して研究活動に取り組んでいます。
がん領域
がん領域
我々の研究活動
がんの罹患数は年々増え続けており、現在、日本人の2人に1人は一生涯で何らかのがんに罹患すると言われています。近年、抗がん剤の進歩は目覚ましく、多種多様な創薬モダリティ*1の治療薬が承認されており、治療成績は大きく改善されてきていますが、未だアンメット・メディカルニーズ*2は存在し、新たな治療薬が求められています。
当社では、低分子医薬品の開発を中心に行っており、特に、新規創薬モダリティとして注目を集めているタンパク質分解誘導剤に焦点を当てて開発研究を行っています。
タンパク質分解誘導剤
タンパク質分解誘導剤は、生体内に備わっているタンパク質分解機構であるユビキチン・プロテアソーム系*3を利用して、標的タンパク質の分解を誘導し、その機能を阻害します。既存の酵素阻害剤や受容体拮抗薬とは作用機序が大きく異なり、タンパク質分解誘導剤は、これまで"undruggable"とされてきた創薬標的を"druggable"とするため、近年注目されている新規の創薬モダリティです。
タンパク質分解誘導剤は大きく2つに分類され、immunomodulatory drugs (IMiDs)に代表されるmolecular glue型とproteolysis targeting chimera (PROTAC)に代表されるbi-functional型があります。Molecular glue型のIMiDsは、E3ユビキチンリガーゼ*4の構成因子の1つであるセレブロンと結合し、特定のタンパク質をリクルート後、ポリユビキチン化に続くプロテアソームによる分解を誘導して薬理作用を示します。
Molecular glueの概念
FPFT-2216
私たちは、クリックケミストリー*5の代名詞的な反応として知られているHuisgen環化付加反応*6の有用性に注目し、新規リード化合物創出を目指した合成展開を行う中で、molecular glue型では新規の骨格であるチオフェン環、及び1,2,3-トリアゾール環を基本骨格とするFPFT-2216を創出しました。
FPFT-2216は、多発性骨髄腫(MM)*7の細胞増殖に必須のIKZF1/3*8を分解することで、MM細胞の増殖抑制や免疫賦活を誘導し、in vitro /in vivoにおいて、強力な抗MM活性を示しました。さらに、FPFT-2216は強力なCK1α*9分解活性を有しており、MM以外の血液がんに対しても有効であることを見出しました(詳細については、下記の研究成果をご参照願います)。
研究成果
[Publication]
・Daiki Kanaoka, Mitsuo Yamada, Hironori Yokoyama, Satoko
Nishino, Naoshi Kunimura, Hiroshi Satoyoshi, Shota
Wakabayashi, Kazunori Urabe, Takafumi Ishii, Masato Nakanishi;
FPFT-2216, a Novel Anti-lymphoma Compound, Induces Simultaneous
Degradation of IKZF1/3 and CK1α to Activate p53 and Inhibit NFκB
Signaling. Cancer Research Communications 2024; 4(2): 312-327.
https://doi.org/10.1158/2767-9764.CRC-23-0264
PMID:38265263
本件に関するお問い合わせにつきましては、下記のフォームからお願い致します。
用語説明
*1 創薬モダリティ
がんの罹患数は年々増え続けており、現在、日本人の2人に1人は一生涯で何らかのがんに罹患すると言われています。近年、抗がん剤の進歩は目覚ましく、多種多様な創薬モダリティ*1の治療薬が承認されており、治療成績は大きく改善されてきていますが、未だアンメット・メディカルニーズ*2は存在し、新たな治療薬が求められています。
当社では、低分子医薬品の開発を中心に行っており、特に、新規創薬モダリティとして注目を集めているタンパク質分解誘導剤に焦点を当てて開発研究を行っています。
タンパク質分解誘導剤
タンパク質分解誘導剤は、生体内に備わっているタンパク質分解機構であるユビキチン・プロテアソーム系*3を利用して、標的タンパク質の分解を誘導し、その機能を阻害します。既存の酵素阻害剤や受容体拮抗薬とは作用機序が大きく異なり、タンパク質分解誘導剤は、これまで"undruggable"とされてきた創薬標的を"druggable"とするため、近年注目されている新規の創薬モダリティです。
タンパク質分解誘導剤は大きく2つに分類され、immunomodulatory drugs (IMiDs)に代表されるmolecular glue型とproteolysis targeting chimera (PROTAC)に代表されるbi-functional型があります。Molecular glue型のIMiDsは、E3ユビキチンリガーゼ*4の構成因子の1つであるセレブロンと結合し、特定のタンパク質をリクルート後、ポリユビキチン化に続くプロテアソームによる分解を誘導して薬理作用を示します。
Molecular glueの概念

FPFT-2216
私たちは、クリックケミストリー*5の代名詞的な反応として知られているHuisgen環化付加反応*6の有用性に注目し、新規リード化合物創出を目指した合成展開を行う中で、molecular glue型では新規の骨格であるチオフェン環、及び1,2,3-トリアゾール環を基本骨格とするFPFT-2216を創出しました。
FPFT-2216は、多発性骨髄腫(MM)*7の細胞増殖に必須のIKZF1/3*8を分解することで、MM細胞の増殖抑制や免疫賦活を誘導し、in vitro /in vivoにおいて、強力な抗MM活性を示しました。さらに、FPFT-2216は強力なCK1α*9分解活性を有しており、MM以外の血液がんに対しても有効であることを見出しました(詳細については、下記の研究成果をご参照願います)。

研究成果
[Publication]
・Daiki Kanaoka, Mitsuo Yamada, Hironori Yokoyama, Satoko
Nishino, Naoshi Kunimura, Hiroshi Satoyoshi, Shota
Wakabayashi, Kazunori Urabe, Takafumi Ishii, Masato Nakanishi;
FPFT-2216, a Novel Anti-lymphoma Compound, Induces Simultaneous
Degradation of IKZF1/3 and CK1α to Activate p53 and Inhibit NFκB
Signaling. Cancer Research Communications 2024; 4(2): 312-327.
https://doi.org/10.1158/2767-9764.CRC-23-0264
PMID:38265263
本件に関するお問い合わせにつきましては、下記のフォームからお願い致します。
用語説明
*1 創薬モダリティ
- 治療手段を大きく分類したものであり、具体的には低分子薬、抗体医薬、核酸医薬、細胞治療、遺伝子細胞治療、遺伝子治療などがあります。
- いまだ有効な治療方法がない疾患に対する医療ニーズ。
- ユビキチン(Ub)・プロテアソーム(PSM)系は、タンパク質に付加されたUb鎖をPSMが認識し、標的タンパク質を分解する生体内システムです。通常、Ub・PSM系の主要な役割は不要タンパク質の分解ですが、この系の異常はがんや感染症などの発症に関与すると考えられています。
- 標的タンパク質を認識して、Ubを付加するのに働く酵素です。
- ベルトがカチッと音を立てて素早くロックされる様子(=クリック)に例えられ、合成化学の分野において、簡単な操作で強固な結合を素早く形成することが可能な方法です。
- ヘテロ原子を含む1,3-双極子とアルキン及びアルケン等の多重結合を持つ化合物の間で進む[3+2]双極子付加環化反応を指します。特に、1,3-双極子の一つであるアジド化合物とアルキンとの反応は、高収率かつ高い基質特異性の特徴を持ち、生命科学研究等において非常に有用な反応として用いられています。
- 血液がんのひとつ。悪性リンパ腫、白血病とともに3大血液がんと呼ばれています。多種多様なMM治療薬が承認されているものの、未だ完治の難しい疾患です。
- Ikaros/Aiolosともいいます。Ikaros転写因子ファミリーに属し、リンパ球の増殖・生存や分化に関与します。
- セリン・スレオニンキナーゼのファミリーに属し、一部の悪性リンパ腫や白血病の治療標的と考えられています。